複素解析 / 第2章 · 2つ目のレッスン
無料レッスンコーシー・リーマン方程式を使う
前回、複素微分可能であるためのヤコビ行列の条件から、次のコーシー・リーマン方程式(CR方程式)が出てきました。 として、
CR方程式の十分条件
CR方程式は複素微分可能性の必要条件です。偏導関数 が近傍で連続なら、CR方程式から複素微分可能性が従います(これは十分条件であり、連続性は必要条件ではありません。通常の教科書の例ではほぼ自動的に満たされます)。
CR方程式が不成立なら複素微分不可能、という反例を見ておきましょう。 とすると 。
なので CR方程式は成り立ちません。 はどちらも(実関数として)なめらかなのに、 はどの点でも複素微分不可能です。「実部・虚部がなめらか」というだけでは、複素微分可能性には足りないのです。
具体例で検算する —
なので 、。
CR方程式がすべての点で成立するので、 は複素平面全体で正則です。
臨界点で等角性が壊れる
定義域(z₀をドラッグ)
像(青=実際の による像、橙の破線円=線形近似)
z0は(1.00, 0.60)。この点での回転角は31.0度、拡大率は2.33倍です。
を原点にドラッグしてみてください。 となり、線形近似(回転+拡大)が意味をなさなくなります。実際、原点付近では は角度を2倍にしてしまい(1章のドメインカラーリングで見た「色相が2周する」現象と同じ理由です)、角度を保つ「等角写像」ではなくなります。この となる点を臨界点と呼びます。次の章「等角写像」では、この臨界点で等角性が破れることを扱います。
理解チェック
、点 での と をそれぞれ計算し、CR方程式が成り立つか確認してください。
答えを見る
、 で一致します(どちらも になるのは の形から)。CR方程式は成立しています。
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 3
について正しい記述はどれですか?
確認 2 / 3
について、点 での の値はいくつですか?()
確認 3 / 3
臨界点()で何が起きますか?
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執筆: 中野竜之介 / 監修: 古郷優平
中野竜之介: 北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり
最終更新: 2026-07-05
主な参考文献: Needham『Visual Complex Analysis』(Oxford) / Ahlfors『Complex Analysis』(McGraw-Hill) / 神保道夫『複素関数入門』(岩波)