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連立系 x′ = Ax — 固有値が方向を決める

2つの量が互いに影響しあう系は、連立1階線形微分方程式で書けます:

ddt(xy)=A(xy),A=(abcd)\frac{d}{dt}\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = A \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}, \qquad A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}

第3章の2階線形も、位置と速度を成分にすればこの形に書き直せます。 そして解の振る舞いを決めるのは、係数行列 AA固有値と固有ベクトル——線形代数コース第9章がここで「使われ」ます。

触ってみる — 成分を動かすと軌道が変わる

AA の4成分をスライダーで動かしてください。左は相平面の軌道、右は固有値の複素平面です。 成分を変えると固有値が動き、軌道が渦を巻いたり・広がったり・鞍のように分かれたりします。

相平面の軌道

固有値の複素平面(虚軸=縦)

分類: 安定な渦状点 tr = -0.60, det = 1.09 λ = -0.30 ± 1.00i

固有値が複素数なら渦(振動)、実数なら軌道は固有ベクトルの直線に沿って進みます。 実部が負なら原点へ収束(安定)、正なら発散(不安定)。固有値が軌道の運命を握っているのが見えます。

種明かし — 対角化 = 各成分が独立に進む座標

AA が固有値 λ1,λ2\lambda_1, \lambda_2、固有ベクトル v1,v2\vec{v}_1, \vec{v}_2 を持つとき、一般解は

(xy)=C1eλ1tv1+C2eλ2tv2\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = C_1 e^{\lambda_1 t}\,\vec{v}_1 + C_2 e^{\lambda_2 t}\,\vec{v}_2

固有ベクトル方向へ分ければ、各成分は eλte^{\lambda t}独立に伸縮するだけ。 これが線形代数コース第9章の対角化の正体です——「固有値は何の役に立つのか」への答えが、ここにあります。 連立してからまった系を、固有ベクトル座標で見ると絡まりがほどけ、nn 本の1階方程式に分かれます。

固有ベクトル = まっすぐ進む特別な方向

初期値を固有ベクトルの上に置くと、解はその直線から外れずに進みます(eλte^{\lambda t} 倍されるだけ)。 λ>0\lambda > 0 なら外向き(赤の線)、λ<0\lambda < 0 なら原点向き(緑の線)。 他の初期値の軌道は、これらの直線を骨組み(漸近線)にして流れます。

試してみよう

理解チェック

固有値が 1-12-2(ともに実で負)のとき、軌道はどうなりますか?

et,e2te^{-t}, e^{-2t} はどちらも減衰するので、すべての軌道が原点へ吸い込まれます(安定な節点)。 2-2 の方向へ速く、1-1 の方向へゆっくり潰れるため、軌道は 1-1 の固有方向に沿って原点へ近づきます。

操作チャレンジ — 固有値で軌道を作る3問

中心・鞍点・安定な節点を、行列の成分スライダーで作り分けてください。

1 / 3

行列 [[s,1],[−1,s]] の s を動かし、固有値を純虚数にして中心(周期軌道)を作ってください。

s = 0.40 分類: 不安定な渦状点

執筆・監修: 中野竜之介北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり

最終更新: 2026-07-05

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