平面曲線を動かす — 速度・弧長・曲がり具合
これまで扱ってきた曲線は のグラフ、つまり「 を決めると が1つ決まる」形でした。 ここからはパラメータ で位置が決まる曲線 を主役にします。 を「時刻」だと思うと、 は時刻 にその点がどこにいるかを表す軌道です。
触ってみる — 曲線の上を動く点
下の図で、曲線(円・放物線・楕円・対数らせん)を切り替えられます。スライダーで を動かすと、 その曲線上の点と、そこでの接線ベクトルT(赤)・法線ベクトルN(緑)・**曲率円(紫の点線円)**が一緒に動きます。
- 円を選ぶと、曲率円は常に元の円そのものに重なります——円はどこでも同じ強さで曲がっている(曲率が一定)ということです
- 放物線を選ぶと、頂点()で曲率円が一番小さくなり、頂点から離れるほど曲率円は急に大きくなって画面からはみ出します——頂点付近が一番きつく曲がっている、ということです
- 楕円では、円に近い場所(短軸に近い側)ほど曲率円が小さく(きつく曲がる)、円から離れた場所(長軸の先端)ほど曲率円が大きく(緩やかに曲がる)なります
数式で見る — 速度・速さ・弧長
を で微分すると速度ベクトルになります。
速度ベクトルの大きさが速さです。
速度ベクトルを大きさ1に正規化したものが単位接ベクトル(進行方向だけを表す矢印)です。
を反時計回りに 回転させたものが単位法線ベクトル(進行方向と直角で、曲線が曲がっていく側を向くベクトル)です。
曲線に沿って実際に進んだ距離(弧長)は、速さを時間で積分したものです。
図の下に表示されている は、そのスライダー範囲の始点から今の までの弧長です。
曲がりの強さ=曲率
「速さ」は動く速さを測る量でした。ここからは「どれだけ急に曲がっているか」を測る量——曲率——を考えます。
曲率が大きいほど急に曲がり、小さいほど緩やかです。曲率の逆数を曲率半径といい、 「その点にもっとも近くぴったり沿う円(曲率円・接触円)」の半径になります。曲率円の中心は、 点 から法線 の向きに だけ進んだ場所(曲線が曲がっていく側)です。
- 円(半径 )はどこでも で一定——曲率円が円自身に一致するのはこのためです
- 放物線 は頂点()で 、——上の図と一致しています
どこで効くのか
- 道路・鉄道のカーブ設計: 曲率半径が小さい(きついカーブ)ほど、安全に曲がれる速度は下がります
- ジェットコースター: 曲率が大きい区間ほど遠心力(体感Gフォース)が強くなります
- 次章の予告: 空間の中の曲線ではもう1つ、曲線がその平面から"ねじれて"外れていく度合い——捩率(れいりつ)——が登場します
試してみよう
- 楕円で を から少しずつ増やすと、曲率円の大きさはどう変わりますか?( は長軸の先端で一番緩やか、短軸に近づくほどきつくなります)
- 対数らせんで を大きくしていくと、曲率円はどうなりますか?(らせんが外側に広がるにつれて曲率円もどんどん大きくなります——曲率は の形で小さくなっていきます)
理解チェック
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 3
単位接ベクトル の向きが表しているものは?
確認 2 / 3
円 (半径2)の曲率 はいくつですか?
確認 3 / 3
放物線 で、頂点()から離れるほど曲率円はどうなりますか?
この章の定義・定理・公式をまとめて確認する
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執筆・監修: 中野竜之介(北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり)
最終更新: 2026-07-05
主な参考文献: 梅原雅顕・山田光太郎『曲線と曲面』(裳華房) / 小林昭七『曲線と曲面の微分幾何』(裳華房) / do Carmo『Differential Geometry of Curves and Surfaces』(Dover)