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熱方程式を解く — モードの減衰

前レッスンで見た「平滑化」を、実際に式で解いて確かめます。境界を固定端(u(0,t)=u(1,t)=0u(0,t)=u(1,t)=0) とすると、sin(nπx)\sin(n\pi x) の形の初期分布は特別です——形を変えずに、ただ振幅だけが減衰します:

u(x,t)=sin(nπx)eα(nπ)2tu(x,t) = \sin(n\pi x)\,e^{-\alpha(n\pi)^2 t}

これは代入すればすぐ確かめられます: x2sin(nπx)=(nπ)2sin(nπx)\partial_x^2\sin(n\pi x)=-(n\pi)^2\sin(n\pi x) なので、 両辺を微分すると ut=αuxxu_t=\alpha u_{xx} をぴったり満たします(近似ではなく厳密解です)。

触ってみる — 高波数ほど速く消える

モード n=1n=1(青)と n=3n=3(橙)の振幅を別々に設定し、時間を再生してください。 n=3n=3 の方が常に速く0へ近づくのが見えます。

減衰係数: n=1n=1eαπ2t=1.000e^{-\alpha\pi^2 t}=1.000n=3n=3eα(3π)2t=1.000e^{-\alpha(3\pi)^2 t}=1.000 — 高波数(n=3)の方が常に速く0へ近づきます

種明かし — 指数の中の n2n^2 が効く

減衰の速さを決める指数は α(nπ)2t-\alpha(n\pi)^2 tnn が3倍になれば指数の中身は9倍—— 波打つ回数が多い(=空間的に速く変化する=凹凸が急な)モードほど、uxxu_{xx} が大きくなり、 速く均されるのです。これは前レッスンの「凹凸が急なほど速く平滑化する」の定量版です。

一般の(単一モードでない)初期分布は、フーリエ正弦級数として複数のモードの和に分解でき、 各モードは独立にこの指数で減衰します(次章で組み立て方を扱います)。

試してみよう

理解チェック

なぜ「高波数=速く減衰」が拡散の平滑化と同じ現象なのか?

角のある(不連続に近い)初期分布は、フーリエ級数で見ると高波数の成分をたくさん含んでいます。 時間が経つとその高波数成分から先に消えるので、残った低波数成分(なめらかな形)だけが残る ——これが「角が丸まる」ことの正体です。

確認問題

式で確かめる

動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。

確認 1 / 2

モード sin(nπx)eα(nπ)2t\sin(n\pi x)e^{-\alpha(n\pi)^2t} で、nn を2倍にすると減衰の指数の中身は何倍になりますか?

確認 2 / 2

u=sin(nπx)eα(nπ)2tu=\sin(n\pi x)e^{-\alpha(n\pi)^2t} が熱方程式の解であることは、どうやって確かめられますか?

📖

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執筆・監修: 中野竜之介北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり

最終更新: 2026-07-05

主な参考文献: Strauss『Partial Differential Equations: An Introduction』(Wiley) / Haberman『Applied Partial Differential Equations』(Pearson) / 俣野博・神保道夫『熱・波動と微分方程式』(岩波)

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