熱方程式を解く — モードの減衰
前レッスンで見た「平滑化」を、実際に式で解いて確かめます。境界を固定端() とすると、 の形の初期分布は特別です——形を変えずに、ただ振幅だけが減衰します:
これは代入すればすぐ確かめられます: なので、 両辺を微分すると をぴったり満たします(近似ではなく厳密解です)。
触ってみる — 高波数ほど速く消える
モード (青)と (橙)の振幅を別々に設定し、時間を再生してください。 の方が常に速く0へ近づくのが見えます。
種明かし — 指数の中の が効く
減衰の速さを決める指数は 。 が3倍になれば指数の中身は9倍—— 波打つ回数が多い(=空間的に速く変化する=凹凸が急な)モードほど、 が大きくなり、 速く均されるのです。これは前レッスンの「凹凸が急なほど速く平滑化する」の定量版です。
一般の(単一モードでない)初期分布は、フーリエ正弦級数として複数のモードの和に分解でき、 各モードは独立にこの指数で減衰します(次章で組み立て方を扱います)。
試してみよう
- にして再生すると、橙(n=3)が先にほぼ消え、青(n=1)だけが残る様子が見えます
- を大きくすると、両方の減衰が速くなりますが、差(が先に消える)はそのままです
理解チェック
なぜ「高波数=速く減衰」が拡散の平滑化と同じ現象なのか?
角のある(不連続に近い)初期分布は、フーリエ級数で見ると高波数の成分をたくさん含んでいます。 時間が経つとその高波数成分から先に消えるので、残った低波数成分(なめらかな形)だけが残る ——これが「角が丸まる」ことの正体です。
確認問題
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 2
モード で、 を2倍にすると減衰の指数の中身は何倍になりますか?
確認 2 / 2
が熱方程式の解であることは、どうやって確かめられますか?
この章の定義・定理・公式をまとめて確認する
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執筆・監修: 中野竜之介(北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり)
最終更新: 2026-07-05
主な参考文献: Strauss『Partial Differential Equations: An Introduction』(Wiley) / Haberman『Applied Partial Differential Equations』(Pearson) / 俣野博・神保道夫『熱・波動と微分方程式』(岩波)