熱方程式 — 拡散という現象を式にする
棒の温度分布 が時間とともにどう変化するかを表すのが熱方程式です:
右辺の は「まわりと比べてどれだけ凸か凹か」を表します。直感はシンプルです—— まわりより熱い点は冷め、まわりより冷たい点は温まる。これを式にしただけが熱方程式です。
触ってみる — 角のある分布も、やがて丸くなる
初期分布を「階段(角がある)」または「山型(なめらか)」から選び、時間を再生してください。 拡散係数 を上げると、平滑化の速さが変わります。
種明かし — 凹凸が変化の向きを決める
(下に凸、まわりより低い谷)なら で温度は上がり、(上に凸、まわりより 高い山)なら で下がります。だから尖った角(局所的に強い凸凹)ほど速く均される—— これが「拡散=平滑化」の正体です。
拡散係数 は平滑化の速さを決めるだけで、平滑化するという性質そのものは変えません。
注意(理論上の性質): 熱方程式の解は、理論上は無限の速さで全域に影響が伝わります (遠くの一点を温めた瞬間、理屈の上ではどんなに離れた点の値も——ごくわずかですが——変化します)。 これは次の章で見る波動方程式(有限の速さ でしか伝わらない)と対照的な性質です。
試してみよう
- 「階段」を選んで を最大にすると、角がどれくらい速く消えるか観察してください
- を最小にすると、同じ時刻でもほとんど平滑化されていないことを確認してください
理解チェック
熱いお茶を放置すると、なぜ表面から冷めていくように見える?
実際にはお茶の中の温度差(まわりより高い/低い)がすべて均されていく現象で、境界(表面や 容器との接触面)は外部(室温)という「境界条件」と接しているため、そこから最も大きな 温度差が生まれ、拡散が最も速く進みます。熱方程式そのものは内部のどの点でも同じルールで 働いています。
確認問題
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 2
熱方程式 で、ある点が周りよりへこんでいる()とき、その点の温度はどうなりますか?
確認 2 / 2
拡散係数 を大きくすると、角のある初期分布はどうなりますか?
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執筆・監修: 中野竜之介(北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり)
最終更新: 2026-07-05
主な参考文献: Strauss『Partial Differential Equations: An Introduction』(Wiley) / Haberman『Applied Partial Differential Equations』(Pearson) / 俣野博・神保道夫『熱・波動と微分方程式』(岩波)