前レッスンで見た3つの型は、実は2階線形PDEの標準形を1つ書けば統一的に分類できます:
auxx+buxy+cuyy=(低階の項)=0
この係数 a,b,c から作る判別式 b2−4ac の符号だけで、型が決まります
(一般二次曲線 ax2+bxy+cy2+dx+ey+f=0 の分類(楕円・放物線・双曲線、退化例を除く)と
同じ判別式です。線形項のない純二次形式 ax2+bxy+cy2=k だけだと、b2−4ac=0 は放物線では
なく平行2直線などへ退化するので注意してください)。
b2−4ac<0⇒楕円型,b2−4ac=0⇒放物型,b2−4ac>0⇒双曲型
触ってみる — スライダーで係数を動かして分類する
a,b,c を動かして、判別式の符号がどう変わるか、型のラベルがどう切り替わるか確かめてください。
auxx+buxy+cuyy=0、a=1, b=0, c=1b2−4ac=−4 → 楕円型
楕円型の例: ラプラス方程式 uxx+uyy=0(a=c=1,b=0)
放物型の例: 熱方程式 ut=αuxx(時間をyと見てa=1,b=0,c=0)
双曲型の例: 波動方程式 utt=c2uxx(a=1,b=0、y方向の係数は−1/c2相当)
判別式の符号だけで3つの型が決まります(係数一定の場合。変数係数では点ごとの局所判定になります)。
種明かし — 3つの代表方程式との対応
- ラプラス方程式 uxx+uyy=0: a=1,b=0,c=1 で b2−4ac=−4<0 → 楕円型
- 熱方程式 ut=αuxx(α>0): 1階の ut を低階項(最高階=2階に満たない項)とみなせば、2階の項だけを集めた主部の係数が (a,b,c)=(α,0,0) の
2階PDEです。判別式 b2−4ac=0 がちょうど成り立つので、厳密に放物型に分類されます
(慣習や極限ではありません)。α=0 だと2階の項自体が消え、この分類の前提が成り立ちません
- 波動方程式 utt=c2uxx: a=1(tについて)、c=−c2(xについて、符号に注意)で
b2−4ac=4c2>0 → 双曲型
この分類は係数が一定(または各点で評価した局所的な値)の場合の話です。係数が変数
(a(x,y) など)だと、領域内で型が変わる(遷音速流れの方程式などが典型例)こともあります。
試してみよう
- a=1,b=0,c=1(ラプラス)にしてから、b を少しずつ増やして判別式が0を超える瞬間を探してください
- a=1,c=1,b=2 にすると判別式はちょうど0(放物型)、b=2ac が境目です
理解チェック
判別式 b2−4ac という式、どこかで見覚えは?
2次方程式の解の公式に出てくる判別式と同じ形です。一般二次曲線 ax2+bxy+cy2+dx+ey+f=0 の
分類(楕円・放物線・双曲線、退化例を除く)にも同じ判別式が使われます(線形項のない
ax2+bxy+cy2=1 だけだと b2−4ac=0 は放物線でなく、係数の符号に応じて平行2直線または空集合に退化するので注意)。PDEの
分類は、この代数の話を微分作用素に置き換えただけなのです。
確認問題
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 2
a=2, b=4, c=1 のとき、判別式 b2−4ac の値はいくつですか?
確認 2 / 2
判別式が正のとき、方程式はどの型に分類されますか?
操作チャレンジ — 図で解く1問
係数 c を動かして、判別式 b2−4ac(a=1, b=4)をちょうど 0(放物型の境界)にしてください。
執筆: 石井馨 / 監修: 中野竜之介
中野竜之介: 北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり
数学レビュー協力: 北町晃洋
最終更新: 2026-07-05
主な参考文献: Strauss『Partial Differential Equations: An Introduction』(Wiley) / Haberman『Applied Partial Differential Equations』(Pearson) / 俣野博・神保道夫『熱・波動と微分方程式』(岩波)
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