偏微分方程式とは何か — 3つの型を時間発展で見る
これまでの微分方程式コースで扱ったのは、変数が1つ(たとえば時刻 )だけの常微分方程式でした。 偏微分方程式(PDE)は、複数の変数(位置 と時刻 、あるいは など)に同時に依存する関数 の偏微分を含む方程式です。フーリエ級数(モード分解)と微分方程式(数値解法・線形性)、 この2つのコースの知識が、ここで1つの体系に統合されます。
理工でもっとも重要な3つのPDEは:
触ってみる — 同じ「山」でも方程式が違えば動きが違う
3つのパネルに同じ山型の初期値を置き、共通の時間スライダーで動かします。 楕円型(ラプラス)だけは時間を進めても形が変わりません——そもそも時間変数を持たない 「定常」問題だからです。放物型(熱)はなめらかに潰れて消え、双曲型(波動)は形をほぼ保ったまま移動します。
楕円(ラプラス) — 定常
時間に依存しない。境界だけで内部が決まる
放物(熱) — 拡散
角がなめらかに丸まりながら減衰する
双曲(波動) — 伝播
形をほぼ保ったまま移動する
種明かし — 発展方程式と境界値問題
熱方程式・波動方程式は時間発展方程式で、時刻 の状態(初期条件)から未来を計算します。 ラプラス方程式には時間変数がなく、境界値問題——領域の縁の値だけから内部を決める問題です。 この違いが、必要な条件の種類を決めます:
- 熱方程式(1階時間微分): 初期条件は の1つだけ
- 波動方程式(2階時間微分): 初期条件は と (速度)の2つ
- ラプラス方程式: 初期条件はなく、境界条件だけで内部が一意に決まる
試してみよう
- 時間スライダーを最後まで進めると、熱のパネルはほぼ平らになりますが、波動のパネルは形を保ったまま動き続けます
- 楕円のパネルだけずっと同じ直線のままであることを確認してください——「時間に依存しない」とはこういうことです
理解チェック
波動方程式の初期条件はなぜ2つ必要?(位置と速度)
波動方程式は時間について2階微分 を含みます。常微分方程式でも2階の方程式(例: ばね )は初期位置と初期速度の2つがないと解が決まらなかったのと同じ理由です。 熱方程式は時間について1階()なので、初期分布1つで十分です。
確認問題
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 2
ラプラス方程式 が「定常」と呼ばれるのはなぜですか?
確認 2 / 2
熱方程式 を解くのに必要な初期条件はいくつですか?
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執筆・監修: 中野竜之介(北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり)
最終更新: 2026-07-05
主な参考文献: Strauss『Partial Differential Equations: An Introduction』(Wiley) / Haberman『Applied Partial Differential Equations』(Pearson) / 俣野博・神保道夫『熱・波動と微分方程式』(岩波)