穴の数で仲間分け — 位相不変量を1つ使う
前のレッスンで、同相(切らずに連続変形で移り合える関係)と、その位相不変量である**穴の数(種数)**を見ました。 今回はこの目印を使って、アルファベットのような身近な図形を仲間分けしてみましょう。
穴の数で仲間分け
アルファベットを「1本の線とみなしたときの形」で見ると、穴の数によっていくつかのグループに分かれます (フォントによって細部は違っても、穴の数はだいたい共通です)。
| 穴の数 | 仲間 | 直感 |
|---|---|---|
| 0個 | I, L, C など | 1本の線分(または曲げた線分)に同相 |
| 1個 | O, D, A など | 輪が1つ。ドーナツの断面のような形に同相 |
| 2個 | B など | 輪が2つ |
これはあくまで「穴の数」で分けた仲間であって、同相類そのものではありません。穴の数が同じでも 同相とは限らないからです——たとえば O と A はどちらも穴1つですが、A には線が3本集まる分岐点があり、 単純な輪である O にはそれがないため、両者は同相ではありません。
のように「一部が開いている輪」は穴がありません——輪を閉じるには端をくっつける(貼る)操作が要るので、 連続変形だけでは輪になれないことに注意してください。
挑戦 — 同相かどうかを当てる
2つの図形が表示されます。切ったり貼ったりせず、連続変形だけで一方をもう一方に重ねられるか—— 穴の数に注目して答えてください。穴の数は同相であるための必要条件です(違えば必ず非同相、 同じでも同相とは限りません)。
O と D は、切ったり貼ったりせず連続変形だけで移り合えますか?(穴の数に注目)
穴の数は「同相であるための必要条件」です。穴の数が違えば必ず非同相ですが、同じでも同相とは限りません。 例: A と O はどちらも穴1つですが、A には線が3本集まる点があり O にはないため、同相ではありません。
正解・不正解にかかわらず、穴の数がいくつずつだったかを確認してから次の問題に進みましょう。
変わってよいもの・変わらないもの、もう一度
前のレッスンの表を思い出してください。穴の数(種数)・連結成分の数・つながり方は同相で保たれますが、 長さ・角度・面積は保たれるとは限りません。この境界を混同すると、次のような誤った主張をしてしまいます。
- 「同相な図形は面積が等しい」→ 誤り。正方形と円は同相ですが面積は一般に異なります
- 「同相な図形は角の数が等しい」→ 誤り。正方形(角4つ)と円(角0)は同相です
- 「同相な図形は穴の数が等しい」→ 正しい。穴の数は位相不変量です
理解チェック
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 3
次のうち、同相であることの必要条件として正しいものはどれですか?
確認 2 / 3
文字 O と文字 C(輪の一部が開いている)は同相ですか?
確認 3 / 3
球面(種数0)とトーラス=ドーナツの表面(種数1)が同相でない理由として正しいのはどれですか?
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執筆・監修: 中野竜之介(北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり)
最終更新: 2026-07-05
主な参考文献: 瀬山士郎『トポロジー: 柔らかい幾何学』(日本評論社) / Armstrong『Basic Topology』(Springer)