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場とは — スカラー場とベクトル場

これまでの関数は「1つの数を入れると1つの数が返る」ものでした。この章の主役は 場所を入れると値が返る関数です。場には2種類あります。

  • スカラー場: 場所を入れるとが返る。気温分布・標高・気圧など
  • ベクトル場: 場所を入れると矢印が返る。風速・水流・電場・磁場など

このコースでは、この2つの場を「触って」grad・div・curl という3つの微分演算を体で理解し、 発散定理・ストークスの定理という「境界と内部の対応」にたどり着きます。

触ってみる — 標高図を読む

天気図の等圧線や地形図の等高線と同じ発想です。スカラー場 f(x,y)=ax2+by2f(x,y)=ax^2+by^2 を 「谷」だと思ってください。同じ高さの点をつないだ線が等高線です。

橙の点をドラッグすると、いま立っている等高線の「高さ」(f の値)が下に表示されます。 a,ba,b スライダーで谷の形(円⇄楕円)も変えられます。

橙の点の座標

橙の点は(1.60, 1.20)。この点でのスカラー場の値はf=3.28で、これがいま立っている等高線の高さです。

スカラー場 f(x,y)=1.0x2+0.5y2f(x,y)=1.0x^2+0.5y^2。橙の点で f=3.28f=3.28(いま立っている等高線の"高さ")
  • 一般に、等高線が密なところは傾きが急(標高が速く変わる)、疎なところは傾きが緩やかです
  • ただしこの図の等高線の水準 0.4, 0.9, 1.6, 2.5, 3.60.4,\ 0.9,\ 1.6,\ 2.5,\ 3.6 は非等間隔なので、見た目の密度だけを 比べても傾きの急さは読み取れません。比較するときは、まず各線の値そのものを確認してください
  • a=ba=b のとき等高線は円、aba\neq b のとき楕円になる。次章の「勾配」で、この形の違いが効いてきます

数式で見る

f(x,y)=ax2+by2f(x,y) = a x^2 + b y^2

は2変数関数の中でもとくに素直な例です。等高線 f(x,y)=cf(x,y)=ca,b,c>0a,b,c>0 のとき必ず 閉じた楕円になります(円は a=ba=b の特別な場合)。この「必ず閉じる」性質のおかげで、 次章以降の可視化(等高線・発散定理の閉曲面など)が全部きれいに描けます。

どこで効くのか

  • 気象: 気温場・気圧場はスカラー場。等圧線が密な場所ほど風が強い(気圧傾度力)
  • 機械学習: 損失関数 L(θ)L(\theta) もスカラー場。パラメータ空間の「地形」を歩くのが勾配降下法です
  • 次章の予告: この地形を「一番急な方向へ」歩く道具が勾配(grad)です

試してみよう

  • aa を大きくすると等高線はどう変わる?(xx 方向に潰れて楕円が縦長になる)
  • 点を原点に近づけると、通る等高線の「高さ」は?(0に近づく。谷底です)

理解チェック

式で確かめる

動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。

確認 1 / 3

スカラー場とベクトル場の違いとして正しいものは?

確認 2 / 3

f(x,y)=2x2+3y2f(x,y)=2x^2+3y^2 について、点 (1,1)(1,1) での値 f(1,1)f(1,1) はいくつですか?

確認 3 / 3

等高線が密集している場所で言えることは?

この章の定義・定理・公式をまとめて確認する

1スカラー場とベクトル場 のまとめページへ

執筆: 古郷優平 / 監修: 中野竜之介

中野竜之介: 北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり

最終更新: 2026-07-05

主な参考文献: Schey『Div, Grad, Curl, and All That』(Norton) / Marsden & Tromba『Vector Calculus』(W.H. Freeman) / 志賀浩二『ベクトル解析30講』(朝倉書店)

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