場とは — スカラー場とベクトル場
これまでの関数は「1つの数を入れると1つの数が返る」ものでした。この章の主役は 場所を入れると値が返る関数——場です。場には2種類あります。
- スカラー場: 場所を入れると数が返る。気温分布・標高・気圧など
- ベクトル場: 場所を入れると矢印が返る。風速・水流・電場・磁場など
このコースでは、この2つの場を「触って」grad・div・curl という3つの微分演算を体で理解し、 発散定理・ストークスの定理という「境界と内部の対応」にたどり着きます。
触ってみる — 標高図を読む
天気図の等圧線や地形図の等高線と同じ発想です。スカラー場 を 「谷」だと思ってください。同じ高さの点をつないだ線が等高線です。
橙の点をドラッグすると、いま立っている等高線の"高さ"(f の値)が下に表示されます。 スライダーで谷の形(円⇄楕円)も変えられます。
- 等高線が密なところは傾きが急(標高が速く変わる)
- 等高線が疎なところは傾きが緩やか
- のとき等高線は円、 のとき楕円になる——次章の「勾配」で、この形の違いが効いてきます
数式で見る
は2変数関数の中でもとくに素直な例です。等高線 は のとき必ず 閉じた楕円になります(円は の特別な場合)。この「必ず閉じる」性質のおかげで、 次章以降の可視化(等高線・発散定理の閉曲面など)が全部きれいに描けます。
どこで効くのか
- 気象: 気温場・気圧場はスカラー場。等圧線が密な場所ほど風が強い(気圧傾度力)
- 機械学習: 損失関数 もスカラー場——パラメータ空間の"地形"を歩くのが勾配降下法です
- 次章の予告: この地形を「一番急な方向へ」歩く道具が**勾配(grad)**です
試してみよう
- を大きくすると等高線はどう変わる?( 方向に潰れて楕円が縦長になる)
- 点を原点に近づけると、通る等高線の"高さ"は?(0に近づく——谷底です)
理解チェック
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 3
スカラー場とベクトル場の違いとして正しいものは?
確認 2 / 3
について、点 での値 はいくつですか?
確認 3 / 3
等高線が密集している場所で言えることは?
この章の定義・定理・公式をまとめて確認する
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執筆・監修: 中野竜之介(北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり)
最終更新: 2026-07-05
主な参考文献: Schey『Div, Grad, Curl, and All That』(Norton) / Marsden & Tromba『Vector Calculus』(W.H. Freeman) / 志賀浩二『ベクトル解析30講』(朝倉書店)