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方向微分を使う

前レッスンで「勾配は最急上昇の向き」と言いましたが、任意の向きへの傾きも 勾配さえ知っていれば計算できます。それが方向微分です。

Duf=fu(u は単位ベクトル)D_{\vec u} f = \nabla f \cdot \vec u \qquad (\vec u\ \text{は単位ベクトル})

この等式には条件があります。その点で ff が(全)微分可能であることです。偏微分 f/x, f/y\partial f/\partial x,\ \partial f/\partial y がどちらも存在するだけでは不十分で、 方向によってこの式からずれてしまう(全微分可能でない)反例が存在します。

触ってみる — 向きを回すと傾きも変わる

固定した点 PP での勾配(赤)と、角度 θ\theta で回せる方向ベクトル u\vec u(緑)を表示しています。 右のグラフは θ\theta002π2\pi まで走査したときの DufD_{\vec u}f の値です。

赤=f\nabla f、緑=方向 uu(単位ベクトル)

DufD_u fθ\theta で走査(緑=現在値)

Duf=fu=2.965D_u f=\nabla f\cdot u=2.965f=3.001|\nabla f|=3.001 が最大値(θ=勾配の向きのとき)

θ\theta スライダーを動かして、グラフの緑の点(現在値)がコサインカーブの上をどう動くか見てください。

  • θ\theta が勾配の向きと一致 → Duf=fD_{\vec u}f = |\nabla f|(最大、最急上昇)
  • θ\theta が勾配と直角(等高線方向) → Duf=0D_{\vec u}f = 0(前レッスンの直交性と同じ)
  • θ\theta が勾配と逆向き → Duf=fD_{\vec u}f = -|\nabla f|(最急降下)

数式で見る

u=(cosθ,sinθ)\vec u=(\cos\theta,\sin\theta) とすると、内積の定義から

Duf=fu=fucosϕ=fcosϕD_{\vec u}f = \nabla f\cdot\vec u = |\nabla f|\,|\vec u|\cos\phi = |\nabla f|\cos\phi

(ϕ\phif\nabla fu\vec u の間の角度)。これは線形代数コースの内積(射影)の応用そのもので、 グラフがコサインカーブになるのはこの式が理由です。

どこで効くのか

  • 登山: 進む向きを変えたときの体感の傾きは、まさに方向微分
  • 機械学習: ある1つのパラメータだけを動かす偏微分は、u\vec u を座標軸方向に選んだ方向微分の特別な場合
  • 等高線に沿う向き: Duf=0D_{\vec u}f=0 になる u\vec u は等高線の接線方向(前レッスンの直交性の言い換え)

試してみよう

  • θ\theta90°90° ずつ動かすと DufD_{\vec u}f の符号はどう変わる?
  • グラフの山(最大)の位置は、キャプションの f|\nabla f| の値と一致するか確認しよう

理解チェック

式で確かめる

動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。

確認 1 / 2

方向微分 Duf=fuD_{\vec u}f=\nabla f\cdot\vec u が最大になるのはどんな u\vec u のときですか?(f0\nabla f\neq\vec 0 とします)

確認 2 / 2

f=(3,4)\nabla f=(3,4) の点で、u=(1,0)\vec u=(1,0) 方向の方向微分 DufD_{\vec u}f はいくつですか?

この章の定義・定理・公式をまとめて確認する

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執筆: 古郷優平 / 監修: 中野竜之介

中野竜之介: 北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり

最終更新: 2026-07-05

主な参考文献: Schey『Div, Grad, Curl, and All That』(Norton) / Marsden & Tromba『Vector Calculus』(W.H. Freeman) / 志賀浩二『ベクトル解析30講』(朝倉書店)

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