方向微分を使う
前レッスンで「勾配は最急上昇の向き」と言いましたが、任意の向きへの傾きも 勾配さえ知っていれば計算できます。それが方向微分です。
触ってみる — 向きを回すと傾きも変わる
固定した点 での勾配(赤)と、角度 で回せる方向ベクトル (緑)を表示しています。 右のグラフは を 〜 まで走査したときの の値です。
赤=、緑=方向 (単位ベクトル)
$D_u f$ を θ で走査(緑=現在値)
θスライダーを動かして、グラフの緑の点(現在値)がコサインカーブの上をどう動くか見てください。
- が勾配の向きと一致 → (最大、最急上昇)
- が勾配と直角(等高線方向) → (前レッスンの直交性そのもの)
- が勾配と逆向き → (最急降下)
数式で見る
とすると、内積の定義から
( は と の間の角度)。これは線形代数コースの内積(射影)の応用そのもので、 グラフがコサインカーブになるのはこの式が理由です。
どこで効くのか
- 登山: 進む向きを変えたときの体感の傾きは、まさに方向微分
- 機械学習: ある1つのパラメータだけを動かす偏微分は、 を座標軸方向に選んだ方向微分の特別な場合
- 等高線に沿う向き: になる は等高線の接線方向——前レッスンの直交性の言い換え
試してみよう
- を ずつ動かすと の符号はどう変わる?
- グラフの山(最大)の位置は、キャプションの の値と一致するか確認しよう
理解チェック
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 2
方向微分 が最大になるのはどんな のときですか?
確認 2 / 2
の点で、 方向の方向微分 はいくつですか?
📖→
この章の定義・定理・公式をまとめて確認する
第2章 勾配と方向微分 のまとめページへ
執筆・監修: 中野竜之介(北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり)
最終更新: 2026-07-05
主な参考文献: Schey『Div, Grad, Curl, and All That』(Norton) / Marsden & Tromba『Vector Calculus』(W.H. Freeman) / 志賀浩二『ベクトル解析30講』(朝倉書店)