テデトク

複素解析 / 第1章 · 2つ目のレッスン

無料レッスン

複素関数を使う — 写像として読む

前回は複素数の極形式と、複素関数を色で見る方法を触りました。今回はそれを計算で扱います。

ド・モアブルの定理

積が「絶対値の積・偏角の和」になることから、同じ数を nn 回掛ければ次が導けます。

zn=rn(cos⁡nθ+isin⁡nθ)z^n = r^n(\cos n\theta + i\sin n\theta)

とくに r=1r=1 のときは次の形になります。

(cos⁡θ+isin⁡θ)n=cos⁡nθ+isin⁡nθ(\cos\theta+i\sin\theta)^n = \cos n\theta + i\sin n\theta

これがド・モアブルの定理です。nn 乗すると偏角がちょうど nn 倍になります。これは前回、z2z^2 のドメインカラーリングで「色相が2周する」として目にした現象と同じです。

z2z^2
0π/2π3π/2

色相 = 偏角(上の帯が凡例)・明るい = |f(z)| が大きい

色相 = arg⁡f(z)\arg f(z)、明るさ = ∣f(z)∣|f(z)| の単調な関数(零点で暗く、極で明るく)。暗い筋は偏角 0,π/2,π,3π/20, \pi/2, \pi, 3\pi/2 の等値線(巻き数を色に頼らず数えられます)。原点は2位の零点 — 原点の周りで色相が2周する

もう一度 z2z^2 を選んで、原点付近の小さな円をイメージしてください。角度 θ\theta の点は z2z^2 で角度 2θ2\theta の点に写ります。円を1周(θ\theta が 00 から 2π2\pi)すれば、写った先は2周してしまいます。だから色相が2周するのです。

1/z1/z に切り替えると、偏角の符号が反転します(arg⁡(1/z)=−arg⁡z\arg(1/z) = -\arg z)。この関係も、関数を切り替えて確認してみましょう。

巻き数の読み方のまとめ

  • 零点・極の位数 = その点を囲む小さな円を1周したときに色相が周回する回数
  • z2z^2: 原点は2位の零点(色相2周)
  • 1/z1/z: 原点は1位の極(色相1周、明るい)
  • (z−a)/(z+a)(z-a)/(z+a): z=az=a が1位の零点、z=−az=-a が1位の極

理解チェック

z=cos⁡40°+isin⁡40°z = \cos 40° + i\sin 40° を5乗すると、偏角は何度になるでしょうか?

答えを見る

ド・モアブルの定理より偏角は 5×40°=200°5\times40° = 200° になります。絶対値は 15=11^5=1 のままです。

式で確かめる

動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。

確認 1 / 3

z=cos⁡20°+isin⁡20°z = \cos 20° + i\sin 20° を4乗した数の偏角は何度ですか?

確認 2 / 3

1/z1/z のドメインカラーリングで、zz と 1/z1/z の偏角の関係はどれですか?

確認 3 / 3

ある点を囲む小さな円を1周すると、1/(z−a)31/(z-a)^3 のドメインカラーリングで色相は何周しますか?(点 z=az=a の周り)

この章の定義・定理・公式をまとめて確認する

第1章 複素数平面と複素関数 — 2枚の平面で見る のまとめページへ

→

執筆: 中野竜之介 / 監修: 古郷優平

中野竜之介: 北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり

最終更新: 2026-07-05

主な参考文献: Needham『Visual Complex Analysis』(Oxford) / Ahlfors『Complex Analysis』(McGraw-Hill) / 神保道夫『複素関数入門』(岩波)

内容の誤り・誤植を見つけたら こちらから報告できます。いただいた指摘は 更新履歴 に反映します。