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微分方程式とは — 方向場で解を眺める

高校数学コース第6章では、漸化式 an+1=f(an)a_{n+1} = f(a_n) で「次の項は今の項から決まる」数列を、 クモの巣図で追いました。微分方程式はその連続版です。「次の値」ではなくその瞬間の変化率を決める:

dydx=f(x,y)\frac{dy}{dx} = f(x, y)

読み方はこうです。「点 (x,y)(x, y) にいるとき、yyf(x,y)f(x,y) の速さで変わる」。 高校数学コース第12章で dydx\frac{dy}{dx} を接線の傾きとして見ました。だからこの式は、 平面の各点に傾きが1つずつ指定されていると読めます。解は数ではなく関数 y(x)y(x) — その傾き指定を残らず満たす曲線です。

触ってみる — 方向場の上に解が浮かぶ

各点に傾き f(x,y)f(x,y) の短い線分を置いたものが方向場(スロープフィールド、slope/direction field)です。 下は成長モデル dydx=0.7y(1y/3)\frac{dy}{dx} = 0.7\,y(1 - y/3) の方向場。橙の点をドラッグしてください。 その点を通る解曲線が、線分をなぞるように前後へ伸びていきます。

dy/dx = 0.7·y(1 − y/3) 緑の破線 = 平衡解

まだ式を解いていません。それでも、初期値を1つ決めれば解が1本に決まることが手で分かります。 どこから出発しても、解は緑の破線 y=3y = 3 に吸い込まれていく——これが方向場の力です。

種明かし — 傾きの地図をなぞるだけ

解曲線がやっていることは単純です。今いる点の傾き f(x,y)f(x,y) を読み、その向きに少し進み、 また次の点で傾きを読み直す。方向場はその傾きを平面じゅうに書き出した地図で、 解はその地図の上を流れる1本の川です。第5章のオイラー法は、この「少し進む」を文字どおり実行します。

初期値 y(x0)=y0y(x_0) = y_0 を1点決めると、そこから川は1本に定まります。これが解の存在と一意性の直感です。 厳密な条件(リプシッツ条件)もありますが、本コースでは深入りしません(発展テーマ)。

平衡解 — 流れが止まる高さ

f(x,y)=0f(x, y) = 0 となる水平線では傾きが 00、つまり解がそこに留まります。これが平衡解です。 上の図では y=0y = 0y=3y = 3 の2本。他の解は y=3y = 3 には吸い寄せられ(== 安定)、 y=0y = 0 からは離れていきます(== 不安定)。安定性の詳しい話は第4章・第6章の主役になります。

試してみよう

理解チェック

「微分方程式を解く」とは、結局何を求めることでしょうか?

数ではなく関数 y(x)y(x) を求めることです。方程式 dydx=f(x,y)\frac{dy}{dx} = f(x,y) を満たす曲線のうち、 初期条件で1本を選び出します。方向場は「その曲線がどう走るか」を、解く前に見せてくれる下絵です。

操作チャレンジ — 方向場を読む3問

方向場の傾き f(y)=0.7y(1y/3)f(y) = 0.7\,y(1 - y/3) を手がかりに、平衡解・最急・下降域を当ててください。

1 / 3

方向場の線分が水平(傾き 0)になる、ゼロでない平衡解の高さ y に合わせてください。

y = 1.50 で 傾き f = 0.525

執筆・監修: 中野竜之介北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり

最終更新: 2026-07-05

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