変換を使う — 合成と非可換
前回、行列は「空間を変形させる操作」で、列は基底の行き先でした。 今回は変換を続けて適用します。行列の掛け算の正体がここで分かります。
ウォームアップ — 第2章の振り返り
2本目の基底ベクトルをドラッグして、1本目と同じ直線上に重ねてください。平面の広がりが線に潰れる状態を作ります。
areaRatio = 0.60(0 に近いほど平行)
触ってみる — 順番を入れ替える
ボタンで「回転してからせん断」と「せん断してから回転」を切り替えてください。 同じ2つの変換なのに、結果の格子が違います。
行列の積 = 変換の合成
変換 をしてから変換 をする合成は、1つの行列 で書けます (適用は右から順、と覚えます: )。
の中身はどう決まるか。答えは前回と同じ発想です: 合成後の基底の行き先を列に並べるだけ。 を で送り、その行き先をさらに で送る。 それが の1列目です。計算式にすると:
丸暗記しがちな「行×列」のルールは、「列 = 基底の行き先の追跡」から自動的に出てきます。
非可換 — 順序は交換できない
上の図で見た通り、一般に です。 「服を着てから靴を履く」と「靴を履いてから服を着る」が違うのと同じで、 変換は操作だから順序に意味があります。数の掛け算の常識がひとつ壊れる、線形代数の名物ポイントです。
一方で結合法則 は成り立ちます。 「3つの操作をこの順で行う」という事実は、どこで区切っても変わらないからです。
特別な行列たち
- 単位行列 — 何もしない変換。
- 零行列 — すべてを原点に潰す変換
- 転置 — 行と列の入れ替え。幾何的な意味は第8章(直交行列)で効いてきます
理解チェック
90°回転を4回合成すると、どんな行列になるでしょうか?
答えを見る
360°回転 = 何もしない = 単位行列です。。 計算せずに幾何で即答できる——これが「行列 = 変換」の見方の強さです。
操作チャレンジ — 図で解く3問
合成変換を、基底の行き先の追跡だけで作ってみましょう。
「90°回転してから、せん断(x に y を足す)」の合成変換を、基底の行き先(星印)をドラッグして1つの行列で作ってください。
î → (1.00, 0.00) ĵ → (0.00, 1.00)