「行列とは数を長方形に並べたもの」。教科書のこの定義で挫折した人のためのレッスンです。
行列の正体は空間を変形させる操作です。正確にいえば、基底を決めたうえで線形写像を成分表示したものを指します。ここでは直感を優先して「変形の操作」として手で動かし、「線形写像」という正式な言い方は後の章で回収します。定義を暗記する前に、まず動かして見てみましょう。
触ってみる
下の図の 赤い点(基底ベクトル ^ の行き先)と 青い点(^ の行き先)をドラッグしてください。
緑の格子(変換後の空間)と黄色い正方形(単位正方形の行き先)が連動して変形します。
行列 A: 第1列 (1.0, 0.0)、第2列 (0.0, 1.0)、行列式 1.0
A=(1.00.00.01.0)detA=1.0
いま何が起きていたのか
2×2 行列
A=(abcd)
の1列目 (ab) は「^=(10) がどこに移るか」、
2列目 (cd) は「^=(01) がどこに移るか」 を表しています。
あなたがドラッグしていたのは、まさにこの「列」そのものです。
基底の行き先さえ決まれば、他のすべてのベクトルの行き先も自動的に決まります。
これが線形性であり、行列とベクトルの積
A(xy)=x(ab)+y(cd)
は「x 個の新しい ^ と y 個の新しい ^ を足す」という意味だったのです。
試してみよう
図をもう一度操作して、次の変換を作ってみてください。
- 回転: 赤い点を (0,1)、青い点を (−1,0) へ → 90°回転
- せん断: 赤い点は (1,0) のまま、青い点を (1,1) へ → 格子が斜めに傾く
- つぶす: 赤と青を同一直線上に置く → 平面全体が1本の直線に潰れる(det A = 0 になることを確認)
理解チェック
行列 A=(2001) は空間をどう変形させるでしょうか?
答えを見る
^ が (2,0) に移り、^ は (0,1) のまま。つまり横方向に2倍に引き伸ばす変換です。
上の図で赤い点を (2,0) に置いて確かめてみてください。
操作チャレンジ — 図で解く5問
読んで分かったら、次は手で証明しましょう。伸縮・回転・せん断・鏡映・退化、
この章の変換をぜんぶ自分の手で作ります。条件を満たした状態を少しキープすると正解です。
e1 の行き先だけを右に2倍へ伸ばし、e2 はそのままにしてください。横方向だけが伸びる変換を作ります。
Ae1=(1.00,0.00) Ae2=(0.00,1.00) det=1.00
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 3
^=(1,0) を (0,1) へ、^=(0,1) を (−1,0) へ移す行列は、平面をどう動かしますか?
確認 2 / 3
^ を (2,0) へ、^ を (0,3) へ移す変換の行列式(det)はいくつ?(単位正方形の面積が何倍になるか)
確認 3 / 3
det=0 の変換が平面にすることは?
執筆: 中野竜之介 / 監修:
中野竜之介: 北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり
数学レビュー協力: 木村敏樹
最終更新: 2026-07-05
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