前回、基底は「空間を測るものさし」だと分かりました。今回はそのものさしで
実際に測る、つまり座標を読み書きする練習です。まずは振り返りから。
ウォームアップ — 第1章の振り返り
青い矢印を動かして、横軸に落ちる影だけを「2目盛り」に合わせてください。先端は軸の上になくてもかまいません。
影 =(1.00,0)
座標とは「レシピ」である
前回の「張る空間」の図をもう一度。スライダーの (c1,c2) は、実は座標そのものです。
基底ベクトル a は (2.0, 1.0)、基底ベクトル b は (-1.0, 1.0)、係数 c1 は 1.5、c2 は 1.0、到達点 c1a+c2b は (2.0, 2.5) です。a と b は独立で、張る空間は平面全体です。
到達点 =(2.0,2.5)。基底 {a,b} での座標は (1.5,1.0)
点 p が基底 {b1,b2} で
p=c1b1+c2b2
と書けるとき、(c1,c2) をこの基底での座標と呼びます。
座標とは「基底ベクトルを何杯ずつ混ぜるか」のレシピなのです。
座標を求める = 連立方程式
では逆に、点 (3,3) を基底 b1=(2,1)、b2=(−1,1) で測ると?
成分ごとに書き下すと:
{2c1−c2=3c1+c2=3
足すと 3c1=6 で c1=2、よって c2=1。
つまり標準座標 (3,3) の点は、この基底では座標 (2,1) に見えます。
同じ点・違う住所。座標の読み替えが連立方程式になる、
この事実は第4章「連立方程式」への入口でもあります。
標準基底は何が特別か
普段の座標 (x,y) は、基底 ^=(1,0)、^=(0,1) でのレシピです。
特別なのは「読みやすい」ことだけで、数学的にはただの基底のひとつ。
データ解析では、データに合わせてものさしを選び直すことがむしろ主役になります
(第11章のPCAは「データが一番ばらつく方向」を新しい基底に選ぶ話です)。
理解チェック
基底 b1=(1,0)、b2=(1,1) のとき、標準座標 (3,2) の点の基底座標は?
答えを見る
c1(1,0)+c2(1,1)=(3,2) より c2=2、c1+c2=3 なので c1=1。
基底座標は (1,2) です。y成分を b2 だけで賄い、残りの横幅を b1 で埋めます。
レシピとして読むと自然に見えてきます。
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 3
点 (3,3) を基底 b1=(2,1)、b2=(−1,1) で測ります。b1 の係数 c1 はいくつですか?
確認 2 / 3
標準座標 (3,2) の点を、基底 b1=(1,0)、b2=(1,1) で測ったときの c1 はいくつですか?
確認 3 / 3
ある点の「基底での座標を求める」ことは、計算としては何をすることですか?
操作チャレンジ — 図で解く5問
座標の読み・書き・そして「ものさしの設計」まで、手でやってみましょう。
基底 b1=(2,1)、b2=(−1,1) のもとで、星印の点を座標 (c1,c2)=(2,1) で表せることをスライダーで確かめてください。
執筆: 中野竜之介 / 監修:
中野竜之介: 北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり
数学レビュー協力: 木村敏樹
最終更新: 2026-07-05
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