テデトク

線形代数の目次

線形代数 / 第2章 · 1つ目のレッスン

無料レッスン

線形結合・張る空間・基底

前章の2つの演算(足し算とスカラー倍)を組み合わせると、c1a⃗+c2b⃗c_1\vec{a} + c_2\vec{b} という式が作れます。これが線形結合です。問題はこうです: 係数 c1,c2c_1, c_2 を自由に選べるとき、どこまで届くのか?

触ってみる

スライダーで係数 c1c_1(赤)と c2c_2(青)を動かすと、黄色い点(到達点)が移動します。届く点の集合(薄緑の領域)が、2本のベクトルの張る空間(スパン、span)です。

そして本題はここから。赤い点と青い点をドラッグして、2本のベクトルを平行にしてみてください。

基底ベクトル a の成分
基底ベクトル b の成分
c1=1.5c_1 = 1.5
c2=1.0c_2 = 1.0

基底ベクトル a は (2.0, 1.0)、基底ベクトル b は (-1.0, 1.0)、係数 c1 は 1.5、c2 は 1.0、到達点 c1a+c2b は (2.0, 2.5) です。a と b は独立で、張る空間は平面全体です。

到達点 =(2.0,2.5)= (2.0, 2.5)。基底 {a,b}\{a, b\} での座標は (1.5,1.0)(1.5, 1.0)

いま何が起きていたのか

普段、2本のベクトルが張る空間は平面全体です。どんな点もc1a⃗+c2b⃗c_1\vec{a} + c_2\vec{b} の形で書けます。ところが2本が平行になった瞬間、届く先は1本の直線に潰れます。b⃗\vec{b} が a⃗\vec{a} のスカラー倍でしかないため、「新しい方向」を何も追加していないからです。

この違いに名前がついています:

  • 2本が新しい方向を持つ → 1次独立(張る空間は平面)
  • 片方がもう片方の倍数 → 1次従属(張る空間は直線に退化)

基底 — 空間の「ものさし」

1次独立な2本 {a⃗,b⃗}\{\vec{a}, \vec{b}\} は平面の基底になれます。基底とは空間の全部の点に住所をつける「ものさし」です。実際、上の図のキャプションを見てください。黄色い点の位置は

p⃗=c1a⃗+c2b⃗\vec{p} = c_1\vec{a} + c_2\vec{b}

なので、(c1,c2)(c_1, c_2) という数の組がそのまま基底 {a⃗,b⃗}\{\vec{a}, \vec{b}\} での座標です。普段使っている (x,y)(x, y) 座標も、実は標準基底 ı^=(1,0),ȷ^=(0,1)\hat{\imath} = (1,0), \hat{\jmath} = (0,1) をものさしにした線形結合 xı^+yȷ^x\hat{\imath} + y\hat{\jmath} にすぎません。同じ点でも、ものさしを替えれば座標は変わります。この視点は次章「行列 = 線形変換」につながります。

試してみよう

  • a⃗,b⃗\vec{a}, \vec{b} を好きな形に置き、スライダーだけで点 (2,2)(2, 2) 付近に到達させてみよう(基底が変わると必要な係数も変わる)
  • 係数を両方 0 にすると?(どんな基底でも原点。張る空間は必ず原点を通る)
  • ほぼ平行だが完全には平行でない2本を作ると?(平面は張れるが、遠くへ行くのに巨大な係数が要る。数値計算で嫌われる「悪条件」の正体)

理解チェック

a⃗=(1,2)\vec{a} = (1, 2) と b⃗=(2,4)\vec{b} = (2, 4) が張る空間はどんな集合でしょうか?

答えを見る

b⃗=2a⃗\vec{b} = 2\vec{a} なので1次従属。張る空間は平面ではなく、原点と (1,2)(1, 2) を通る1本の直線です。図で a⃗\vec{a} を (1,2)(1,2)、b⃗\vec{b} を (2,4)(2,4) 付近に置くと「ほぼ平行」の警告が出ることを確かめてください。

式で確かめる

動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。

確認 1 / 3

a⃗=(1,2)\vec{a} = (1,2) と b⃗=(2,4)\vec{b} = (2,4) が張る空間(スパン)はどんな集合ですか?

確認 2 / 3

2本のベクトルが「1次従属」であるとは、どういう状態ですか?

確認 3 / 3

平面(2次元)の基底になれる2本のベクトルの条件は?

操作チャレンジ — 図で解く5問

読んで分かったら、次は手で証明しましょう。5問すべて、図の操作だけで解けます。条件を満たした状態を少しキープすると正解になります。

問1 / 5
問1・現在問2問3問4問5

係数スライダーを動かして、ベクトル vv の33倍で星印に届かせてください。

c1=1.00c_1 = 1.00

この章の定義・定理・公式をまとめて確認する

第2章 線形結合・張る空間・基底 のまとめページへ

→

執筆: 中野竜之介 / 監修:

中野竜之介: 北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり

数学レビュー協力: 木村敏樹・田邊真郷

最終更新: 2026-07-05

内容の誤り・誤植を見つけたら こちらから報告できます。いただいた指摘は 更新履歴 に反映します。