線形結合・張る空間・基底
前章の2つの演算——足し算とスカラー倍——を組み合わせると、 という式が作れます。これが線形結合です。 問題はこうです: 係数 を自由に選べるとき、どこまで届くのか?
触ってみる
スライダーで係数 (赤)と (青)を動かすと、黄色い点(到達点)が移動します。 届く点の集合——薄緑の領域——が、2本のベクトルの張る空間(スパン、span)です。
そして本題はここから。赤い点と青い点をドラッグして、2本のベクトルを平行にしてみてください。
c₁ = 1.5
c₂ = 1.0
いま何が起きていたのか
普段、2本のベクトルが張る空間は平面全体です。どんな点も の形で書けます。ところが2本が平行になった瞬間、 届く先は1本の直線に潰れます。 が のスカラー倍でしかないため、 「新しい方向」を何も追加していないからです。
この違いに名前がついています:
- 2本が新しい方向を持つ → 1次独立(張る空間は平面)
- 片方がもう片方の倍数 → 1次従属(張る空間は直線に退化)
基底 — 空間の「ものさし」
1次独立な2本 は平面の基底になれます。 基底とは空間の全部の点に住所をつける「ものさし」です。 実際、上の図のキャプションを見てください。黄色い点の位置は
なので、 という数の組がそのまま基底 での座標です。 普段使っている 座標も、実は標準基底 を ものさしにした線形結合 にすぎません。 同じ点でも、ものさしを替えれば座標は変わる——この視点が次章「行列 = 線形変換」の鍵になります。
試してみよう
- を好きな形に置き、スライダーだけで点 付近に到達させてみよう(基底が変わると必要な係数も変わる)
- 係数を両方 0 にすると?(どんな基底でも原点。張る空間は必ず原点を通る)
- ほぼ平行だが完全には平行でない2本を作ると?(平面は張れるが、遠くへ行くのに巨大な係数が要る——数値計算で嫌われる「悪条件」の正体)
理解チェック
と が張る空間はどんな集合でしょうか?
答えを見る
なので1次従属。張る空間は平面ではなく、 原点と を通る1本の直線です。図で を 、 を 付近に 置くと「潰れた!」の警告が出ることを確かめてください。
操作チャレンジ — 図で解く5問
読んで分かったら、次は手で証明しましょう。5問すべて、図の操作だけで解けます。 条件を満たした状態を少しキープすると正解になります。
問1 / 5
係数スライダーを動かして、ベクトル v の3倍で星印に届かせてください。
c₁ = 1.00