ウォームアップ — 第11章の振り返り
グラフが x=2 で「向かっている高さ」に、橙の破線をぴったり合わせてください。そこに関数の値はありません(穴)。
前のレッスンでε-δゲームのルールを覚えました。今回はこの道具で
「連続」を定義し直し、数列にも同じ考えを広げ、最後に守れない主張を暴く技術を身につけます。
連続の定義 — 極限と値が一致する
高校11章では「ペンを離さず描ける」が連続でした。ε-δの言葉では1行です:
x→alimf(x)=f(a)
つまり「極限が存在して、しかもその行き先が f(a) 自身」。
穴あき関数が不連続なのは、極限(L)はあるのに f(a) が別の場所(または存在しない)だからです。
2つの概念の分離が、定義のレベルではっきり見えます。
f(x)=x2 は x=1 で連続。どんな橙の帯にも青の帯で応じられ、行き先は f(1)=1 ちょうどです。
数列の極限 — δ の代わりに N
数列 an→L の定義は、守りの道具が「幅 δ」から「番号 N」に変わるだけです:
∀ε>0, ∃N∈N, ∀n∈N (n>N⇒∣an−L∣<ε)
「どんな許容誤差 ε を突きつけられても、十分先の項からは全部その誤差内に入る」。
第3章(級数)で部分和の収束を扱うときの土台がこれです。
高校6章のクモの巣図で見た「吸い込まれていく」現象は、この定義で初めて証明できる主張になります。
守れない主張を暴く — 否定の技術
「収束しない」ことを示すには、ゲームの攻守を交代します:
ある ε を1つ選び、相手がどんな δ を出してきても赤(反例)を見つければ勝ちです。
∃ε>0 s.t. ∀δ>0, ∃x: 0<∣x−a∣<δ かつ ∣f(x)−L∣≥ε
量化子(∀/∃)が全部裏返っていることを確認してください。
論理の否定を機械的に作る練習として、ε-δは格好の題材です。
試してみよう
- f(x)=1/x は x→2 で 1/2 に収束します。ε=0.1 に対する最大の守りは δ=4ε/(1+2ε)=1/3。左端(分母が小さくなる側)が先に破れるのがポイント
- 段差関数(高校11章)が x=1 で収束しないことを、ε=0.5 で暴く筋書きを言葉で組み立ててみてください
操作チャレンジ — 攻防で解く
守りの2問(攻めた δ だけが認められます)と、過大な主張を反例で暴く1問。
相手の攻めは ε=0.5。はみ出さない範囲で、δ をできるだけ大きく主張してください(最大の6割以上で合格)。
橙 = ε帯 / 青 = δ帯 / 赤 = 反例
赤い部分 = はみ出し(反例)。δが大きすぎます。
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 3
「f が x=a で連続」を ε-δ の言葉で書くとどれですか?
確認 2 / 3
数列 an→L の定義では、δ の代わりに何を使いますか?
確認 3 / 3
f(x)=1/x、x→2、L=1/2 のとき、ε=0.1 に対する最大の δ=4ε/(1+2ε) はいくつ?
執筆: 中野竜之介 / 監修:
中野竜之介: 北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり
数学レビュー協力: 藤田晃平・木村敏樹
最終更新: 2026-07-05
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