テイラー展開 — 次数を上げて近づく
高校数学コース第12章で「なめらかな曲線は拡大すると直線に見える」— 接線 = 1次近似を学びました。 自然な次の問いはこうです: 直線の次は何でしょうか。放物線で近似したら、もっと広く合うのでは? その通りです。しかも何次でも続けられます。
触ってみる
薄い線が 、青がその近似多項式です。次数 n のスライダーを上げてください。
展開中心 a は 0.00、次数 n は 1 です。青い曲線は a のまわりの 1 次テイラー多項式、薄い曲線は正弦関数です。中心での両者の値は 0.00 です。
(接線)では中心付近しか合いません。次数を上げるたびに、 多項式が sin カーブに巻き付いていくのが見えるはずです。
種明かし
のまわりで を多項式 で近似します。作り方は 「中心での値・傾き・曲がり具合・その先の導関数まで、全部一致させる」:
の導関数は の循環なので、偶数次が消えて:
その接線は、この式の の項だけだったのです。 テイラー展開は「線形近似の続き」— 近似の精度を注文できるようになった、と読めます。
多項式と級数の違い
ここまでの は、次数 で打ち切った有限個の項からなる多項式(テイラー多項式)です。 これに対して まで足し続けた無限和
をテイラー級数と呼びます。上のスライダーが見せていたのは、 を増やして をテイラー級数に近づけていく様子でした。「 次の近似多項式」と「無限和である級数」は別物、と区別しておくと、この先の議論(級数がどこまで元の関数と一致するか)が読みやすくなります。
なぜMLでも出てくるのか
損失関数を最小化するとき、現在地のまわりで2次近似(値・勾配・曲率)を作って 「この放物線の底へ動く」のがニュートン法系の最適化です。 コンピュータが のような値を計算するときも、根っこにあるのは「多項式で近似する」この発想です(実際の数値ライブラリは、引数を扱いやすい範囲に畳んでから誤差を最小化する多項式を使うなどの工夫を加えます)。
試してみよう
- にして、どのあたりまで sin と重なっているか見てください。 程度なら3次でよく合います(誤差はおよそ 以下)— 有名な近似 です
- 次数を最大まで上げてから端( 付近)を見てください。まだズレています。多項式は「中心の近く」から順に征服していきます
理解チェック
のマクローリン展開(0まわり)の最初の3項を書いてください。
答えを見る
。 の導関数の循環は なので、今度は奇数次が消えます。
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 3
のマクローリン展開(まわり)を3次の項まで書くと、どれですか?
確認 2 / 3
のテイラー展開で、 の項の係数はいくつですか?
確認 3 / 3
のマクローリン展開(まわり)の最初の3項はどれですか?
この章の定義・定理・公式をまとめて確認する
第2章 テイラー展開 — 多項式で近似する のまとめページへ
執筆: 中野竜之介 / 監修:
中野竜之介: 北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり
数学レビュー協力: 藤田晃平・木村敏樹
最終更新: 2026-07-05