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置換積分・部分積分 — 積分を「写し替える」

原始関数の逆引き表に載っていない積分はどうするか。 答えは「知っている形に写し替える」。その二大技法が置換積分と部分積分です。

触ってみる — 面積が保存される瞬間

2xcos(x2)dx\displaystyle \int 2x \cos(x^2)\,dx は表にありません。でも u=x2u = x^2 という新しい変数で世界を見直すとどうなるでしょうか。 スライダーで上端を動かして、左右の面積が常に一致するのを確かめてください。

x の世界: 2xcos(x2)2x\cos(x^2)

u=x2u = x^2 の世界: cosu\cos u

00.702xcos(x2)dx=00.49cosudu=0.4706\int_0^{0.70} 2x\cos(x^2)\,dx = \int_0^{0.49} \cos u\,du = 0.4706

局所的には、dxdxdug(x)dxdu \approx g'(x)dx に写る補正として見えます。 次の図では小区間を動かし、xx 側と uu 側で同じ面積片になることを比べます。

g(x)=x2+0.2xg(x)=x^2+0.2xg(x)=2x+0.2g'(x)=2x+0.2f(u)=1+0.35cosuf(u)=1+0.35\cos u

xx の世界: f(g(x))g(x)f(g(x))g'(x)

u=g(x)u=g(x) の世界: f(u)f(u)

全体の面積
1.9201.920
選んだ小区間
dx=0.080dx=0.080du=0.134du=0.134
伸縮率
g(0.700)=1.600g'(0.700)=1.600
局所面積
0.1700.170
全体では 0.2001.200f(g(x))g(x)dx=0.0801.680f(u)du=1.920\int_{0.200}^{1.200} f(g(x))g'(x)\,dx = \int_{0.080}^{1.680} f(u)\,du = 1.920 です。
小区間では du=g(0.780)g(0.700)=0.134du=g(0.780)-g(0.700)=0.134g(0.700)dx=0.128g'(0.700)dx=0.128 が、横幅の局所的な伸縮率を表します。

種明かし — 置換積分

u=x2u = x^2 とおくと du=2xdxdu = 2x\,dx。つまり被積分関数の「2x2x」の部分は、 横軸の伸縮率の補正係数だったのです:

0b2xcos(x2)dx=0b2cosudu=sin(b2)\int_0^b 2x\cos(x^2)\,dx = \int_0^{b^2} \cos u\,du = \sin(b^2)

x の世界では場所ごとに横幅が伸縮しますが(dxdxdudu の比率が 2x2x)、 その補正込みで面積は完全に保存されます。 「置換積分 = 変数の付け替えによる面積の写し替え」ということです。公式 du=g(x)dxdu = g'(x)dx の正体はこの伸縮補正です。

部分積分 — 積の法則の逆再生

第13章の積の法則 (fg)=fg+fg(fg)' = f'g + fg' を積分すると:

fgdx=fgfgdx\int f g'\,dx = fg - \int f' g\,dx

「積の形の積分」を「別の積の形」に付け替える道具です。定番の例:

xexdx=xex1exdx=(x1)ex+C\int x e^x dx = x e^x - \int 1 \cdot e^x dx = (x-1)e^x + C

微分すると簡単になるもの(xx)を ff、積分できるもの(exe^x)を gg' に選ぶのがコツです。

試してみよう

  • cos(3x)dx\displaystyle \int \cos(3x)\,dx を置換(u=3xu = 3x)で。補正係数 13\frac{1}{3} を忘れずに
  • xcosxdx\displaystyle \int x \cos x\,dx を部分積分で(=xsinx+cosx+C= x\sin x + \cos x + C。微分して検算を)
  • 上の図で bb を最大まで動かすと面積が減り始めます。cos(x2)\cos(x^2) が負になる領域に入ったからで、前レッスンの「符号付き面積」の話です

理解チェック

012xex2dx\displaystyle \int_0^1 2x\, e^{x^2} dx は?(置換一発です)

答えを見る

u=x2u = x^201eudu=e11.718\displaystyle \int_0^1 e^u du = e - 1 \approx 1.718。 「2x2xdudu の補正分としてちょうど吸収される」形は、見えるようになると一瞬です。

もう1問: xcosxdx\displaystyle \int x \cos x\,dx を計算するには、どの技法を選ぶべきでしょうか?

答えを見る

部分積分です。x(多項式)は微分すると消えていき、cos x は積分してもぐるぐる回るだけです。「微分でほどける方をほどく」のが選択の目安です。置換が効くのは「中身の微分が外にいる」形のときでした。

式で確かめる

動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。

確認 1 / 3

012xex2dx\displaystyle \int_0^1 2x\,e^{x^2}\,dx はいくつですか?(置換一発。小数でよい)

確認 2 / 3

xcosxdx\displaystyle \int x\cos x\,dx を計算するには、どの技法を選ぶのが適切ですか?

確認 3 / 3

部分積分の公式 fgdx\displaystyle \int f g'\,dx はどれと等しいですか?

この章の定義・定理・公式をまとめて確認する

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執筆: 榎本颯斗 / 監修: 中野竜之介

中野竜之介: 北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり

数学レビュー協力: 野田一成・木村敏樹

最終更新: 2026-07-05

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