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基礎 — 成分・内積・なす角

無料の高校コースで基礎から確認できます: 矢印の足し算・伸び縮み / 成分と内積 — 線形代数の入口。ここでは入試で使う形に絞って、計算のスピードを上げます。

この単元で問われること

入試のベクトル(基礎レベル)は、ほとんどが次の4つの計算の組み合わせです。

使う式は ab=a1b1+a2b2\vec a\cdot\vec b=a_1b_1+a_2b_2 の1つだけです。これをどの向きに使うかで4つの型に分かれます。

解法の型

型1 — 成分の計算(和差・スカラー倍・大きさ)

a,b\vec a,\vec b が成分で与えられていて、和・差・スカラー倍・大きさを求める問題はこの型です。スカラー倍を先に済ませてから成分ごとに足し引きし、大きさは最後に  \sqrt{\ } で出します。この順番を守ると符号ミスが減ります。

a=(1,2)\vec{a} = (1, 2)b=(3,1)\vec{b} = (3, -1) のとき a2b|\vec{a} - 2\vec{b}| を求めよ。

2b=(6,2)2\vec{b} = (6, -2) なので

a2b=(16, 2(2))=(5,4)\vec{a} - 2\vec{b} = (1 - 6,\ 2 - (-2)) = (-5, 4) a2b=(5)2+42=41|\vec{a} - 2\vec{b}| = \sqrt{(-5)^2 + 4^2} = \sqrt{41}

型2 — 内積の成分計算・なす角

ベクトル a の成分
ベクトル b の成分

ベクトル a は (1.5, 2.0)、ベクトル b は (3.0, 0.5)、内積は 5.50、なす角は 44 度です。a の b 方向への正射影は (1.78, 0.30)、影の長さは 1.81 です。

ab=5.50a \cdot b = 5.50 θ=44\theta = 44° 影の長さ = 1.811.81

「内積」「なす角」という言葉が出たら、成分公式 a1b1+a2b2a_1b_1+a_2b_2 から入ります。内積を計算し、a,b|\vec a|,|\vec b| を出し、cosθ\cos\theta の値を作り、その値になる角度を読む。この一本道です。

ab=abcosθ=a1b1+a2b2\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta = a_1 b_1 + a_2 b_2

a=(1,3)\vec{a} = (1, \sqrt{3})b=(2,0)\vec{b} = (2, 0) のなす角 θ\theta を求めよ。

ab=12+30=2,a=1+3=2,b=4=2\vec{a}\cdot\vec{b} = 1\cdot2 + \sqrt{3}\cdot0 = 2,\qquad |\vec{a}| = \sqrt{1+3} = 2,\qquad |\vec{b}| = \sqrt{4} = 2 cosθ=222=12    θ=60\cos\theta = \frac{2}{2\cdot2} = \frac{1}{2} \implies \theta = 60^\circ

型3 — 垂直条件

「垂直」「直角」、または記号 ab\vec a\perp\vec b が出たら、内積 =0=0 の方程式に置き換えます。未知の成分を文字でおき、内積を文字の式で書き、=0=0 とおいて解くだけです。

ab    ab=0\vec{a} \perp \vec{b} \iff \vec{a} \cdot \vec{b} = 0

a=(1,k)\vec{a} = (1, k)b=(2,1)\vec{b} = (2, -1) と垂直であるとき、kk の値を求めよ。

ab=12+k(1)=2k=0    k=2\vec{a}\cdot\vec{b} = 1\cdot2 + k\cdot(-1) = 2 - k = 0 \implies k = 2

型4 — 平行条件

「平行」「同じ直線上」、または一方が他方の実数倍だと分かったときはこの型です。b=ka\vec b=k\vec a とおいてもよいのですが、成分だけで判定するなら次の式が使えます。

ab    a1b2a2b1=0\vec{a} \parallel \vec{b} \iff a_1b_2-a_2b_1=0

これは「成分の比が等しい」ことと同じ内容を、比を作らずに積の形で書いたものです。

a=(2,3)\vec{a} = (2, 3)b=(x,6)\vec{b} = (x, 6) と平行であるとき、xx の値を求めよ。

a1b2a2b1=263x=123x=0    x=4a_1b_2-a_2b_1 = 2\cdot6-3\cdot x = 12-3x=0 \implies x=4

b=(4,6)=2a\vec b=(4,6)=2\vec a なので、a\vec a と同じ向きに長さを2倍したベクトルだと分かります(kk が負なら逆向きです)。

つまずきポイント

  1. 引き算の符号を1か所だけ変え忘れるab\vec a-\vec b を成分で計算するとき、(a1b1, a2b2)(a_1-b_1,\ a_2-b_2)xx 成分だけ符号を変えて yy 成分を変え忘れる、といったミスが目立ちます。2成分とも同じ操作をしたか、書いてから見直します。
  2. なす角を cosθ\cos\theta の値で止めてしまう。設問は「cosθ\cos\theta を求めよ」ではなく「なす角を求めよ」であることが多く、cosθ=12\cos\theta=\dfrac12 を出しただけでは答えになりません。角度まで読み切ります。
  3. 平行条件を成分の比で覚えてゼロ割りに詰まるb1a1=b2a2\dfrac{b_1}{a_1}=\dfrac{b_2}{a_2} と覚えると、a1=0a_1=0 のときに比が作れず止まります。a1b2a2b1=0a_1b_2-a_2b_1=0 という積の形なら、どの成分が0でも困りません。

演習問題

易しい問題から並べています。自力で解いてから答えを開いてください。

問1 ★☆☆☆☆: a=(3,1)\vec a=(3,1)b=(2,4)\vec b=(-2,4) のとき a+b\vec a+\vec b を求めよ。

成分どうしを足すだけです。

a+b=(3+(2), 1+4)=(1,5)\vec a+\vec b = (3+(-2),\ 1+4) = (1, 5)
問2 ★☆☆☆☆: a=(5,12)\vec a=(-5,12) のとき a|\vec a| を求めよ。a=(5)2+122=25+144=169=13|\vec a| = \sqrt{(-5)^2+12^2} = \sqrt{25+144} = \sqrt{169} = 13
問3 ★☆☆☆☆: a=(1,5)\vec a=(1,5)b=(4,1)\vec b=(4,1) のとき ab\vec a-\vec bab|\vec a-\vec b| を求めよ。ab=(14, 51)=(3,4)\vec a-\vec b = (1-4,\ 5-1) = (-3,4)ab=(3)2+42=9+16=25=5|\vec a-\vec b| = \sqrt{(-3)^2+4^2} = \sqrt{9+16} = \sqrt{25} = 5
問4 ★☆☆☆☆: a=(4,3)\vec a=(4,3)b=(2,6)\vec b=(2,6) のとき 2ab2\vec a-\vec b と、その大きさを求めよ。

2a=(8,6)2\vec a=(8,6) なので

2ab=(82, 66)=(6,0)2\vec a-\vec b = (8-2,\ 6-6) = (6,0)2ab=62+02=6|2\vec a-\vec b| = \sqrt{6^2+0^2} = 6
問5 ★☆☆☆☆: a=(3,4)\vec a=(3,4)b=(4,3)\vec b=(4,3) の内積を求めよ。ab=34+43=12+12=24\vec a\cdot\vec b = 3\cdot4+4\cdot3 = 12+12 = 24
問6 ★★☆☆☆: a=(1,0)\vec a=(1,0)b=(1,1)\vec b=(1,1) のなす角を求めよ。ab=11+01=1,a=1,b=2\vec a\cdot\vec b = 1\cdot1+0\cdot1=1,\qquad |\vec a|=1,\qquad |\vec b|=\sqrt2cosθ=112=22    θ=45\cos\theta = \frac{1}{1\cdot\sqrt2} = \frac{\sqrt2}{2} \implies \theta=45^\circ
問7 ★★☆☆☆: a=(2,0)\vec a=(2,0)b=(1,3)\vec b=(-1,\sqrt3) のなす角を求めよ。ab=2(1)+03=2,a=2,b=1+3=2\vec a\cdot\vec b = 2\cdot(-1)+0\cdot\sqrt3=-2,\qquad |\vec a|=2,\qquad |\vec b|=\sqrt{1+3}=2cosθ=222=12    θ=120\cos\theta = \frac{-2}{2\cdot2} = -\frac12 \implies \theta=120^\circ

内積が負なので鈍角になります。cosθ\cos\theta の符号だけでも鋭角・鈍角の見当がつきます。

問8 ★★☆☆☆: a=(2,1)\vec a=(2,1)b=(1,3)\vec b=(1,3) のなす角を求めよ。ab=21+13=5,a=5,b=10\vec a\cdot\vec b = 2\cdot1+1\cdot3=5,\qquad |\vec a|=\sqrt5,\qquad |\vec b|=\sqrt{10}cosθ=5510=550=552=12    θ=45\cos\theta = \frac{5}{\sqrt5\cdot\sqrt{10}} = \frac{5}{\sqrt{50}} = \frac{5}{5\sqrt2} = \frac{1}{\sqrt2} \implies \theta=45^\circ

成分が単純な整数でも、なす角がきれいな角度になるとは限りません。cosθ\cos\theta を約分しきってから角度を読みます。

問9 ★★☆☆☆: a=(k,6)\vec a=(k,6)b=(3,2)\vec b=(3,-2) と垂直であるとき、kk の値を求めよ。ab=3k+6(2)=3k12=0    k=4\vec a\cdot\vec b = 3k+6\cdot(-2) = 3k-12=0 \implies k=4
問10 ★★☆☆☆: a=(t, t1)\vec a=(t,\ t-1)b=(2,3)\vec b=(2,3) と垂直であるとき、tt の値を求めよ。

第2成分が t1t-1 になっている点以外は型3と同じです。

ab=2t+3(t1)=5t3=0    t=35\vec a\cdot\vec b = 2t+3(t-1) = 5t-3=0 \implies t=\frac35
問11 ★★☆☆☆: a=(3,6)\vec a=(3,-6)b=(x,2)\vec b=(x,2) と平行であるとき、xx の値を求めよ。a1b2a2b1=32(6)x=6+6x=0    x=1a_1b_2-a_2b_1 = 3\cdot2-(-6)\cdot x = 6+6x=0 \implies x=-1

確かめると b=(1,2)=13a\vec b=(-1,2)=-\dfrac13\vec a で、確かに a\vec a の実数倍になっています。

問12 ★★★☆☆: a=(3,4)\vec a=(3,-4) と平行で、大きさが 1515 のベクトル b\vec b を求めよ(2つあります)。

a=9+16=5|\vec a|=\sqrt{9+16}=5 なので、b=ka\vec b=k\vec a とおくと b=k5=15|\vec b|=|k|\cdot5=15 より k=3|k|=3、つまり k=±3k=\pm3 です。

k=3: b=(9,12),k=3: b=(9,12)k=3:\ \vec b=(9,-12),\qquad k=-3:\ \vec b=(-9,12)

平行条件は「向きが同じ」とは限りません。大きさだけの条件では、同じ向きと逆向きの2つが答えになります。

問13 ★★☆☆☆: a=(2,1)\vec a=(2,-1)b=(4,2)\vec b=(4,-2) の関係(垂直・平行・どちらでもない)を判定せよ。

垂直かどうかは内積、平行かどうかは a1b2a2b1a_1b_2-a_2b_1 で判定します。

ab=24+(1)(2)=100(垂直ではない)\vec a\cdot\vec b = 2\cdot4+(-1)\cdot(-2) = 10 \neq 0 \quad(\text{垂直ではない})a1b2a2b1=2(2)(1)4=4+4=0(平行)a_1b_2-a_2b_1 = 2\cdot(-2)-(-1)\cdot4 = -4+4=0 \quad(\text{平行})

実際 b=(4,2)=2a\vec b=(4,-2)=2\vec a で、a\vec a と同じ向きに2倍したベクトルです。垂直か平行かは別々の式で判定するので、両方確かめないとどちらとも言えません。

問14 ★★★☆☆: 3点 A(1,2)A(1,2)B(4,3)B(4,3)C(2,5)C(2,5) について、A\angle A が鋭角・直角・鈍角のどれかを判定せよ。

A\angle A は2つの辺 ABABACAC のなす角です。頂点Aを始点にそろえて、AB=BA\vec{AB}=B-AAC=CA\vec{AC}=C-A を作ってから内積を取ります。

AB=(41, 32)=(3,1),AC=(21, 52)=(1,3)\vec{AB} = (4-1,\ 3-2) = (3,1),\qquad \vec{AC} = (2-1,\ 5-2) = (1,3)ABAC=31+13=6>0\vec{AB}\cdot\vec{AC} = 3\cdot1+1\cdot3 = 6 > 0

内積が正なので cos(A)>0\cos(\angle A)>0、つまり A\angle A は鋭角です(内積が0なら直角、負なら鈍角)。座標の3点から角度を判定する問題では、まず対象の頂点を始点にそろえてベクトルを作ることが出発点になります。

式で確かめる

動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。

確認 1 / 5

a=(6,8)\vec{a} = (6, -8) のとき、a|\vec{a}| はいくつですか?

確認 2 / 5

a=(2,5)\vec{a} = (2, 5)b=(1,3)\vec{b} = (-1, 3) のとき、内積 ab\vec{a}\cdot\vec{b} はいくつですか?

確認 3 / 5

a=(1,1)\vec{a} = (1, 1)b=(0,2)\vec{b} = (0, -2) のなす角 θ\theta はどれですか?

確認 4 / 5

a=(k,5)\vec{a} = (k, 5)b=(2,4)\vec{b} = (2, -4) と垂直であるとき、kk の値はいくつですか?

確認 5 / 5

a=(4,2)\vec{a} = (4, -2)b=(x,3)\vec{b} = (x, 3) と平行であるとき、xx の値はいくつですか?

📖

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執筆・監修: 中野竜之介北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり

最終更新: 2026-07-05

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