分散・標準偏差を使いこなす
前回のレッスンでは、ヒストグラムの階級幅を動かし、シーソーで平均値と中央値の違いを体感しました。 今回は同じ道具を「読む」から「計算して使う」に進めます。統計検定2級の頻出地帯です。
分散の計算、2つの顔
定義通りの計算は「偏差→2乗→平均」でした:
実務と試験で多用するのは、展開して得られるもう1つの顔です。ただし注意が必要で、「2乗の平均 − 平均の2乗」がぴったり一致するのは分母 の標本分散の方で、分母 の不偏分散 とは少しずれます。
例えばデータ 1, 2, 3, 4, 5(平均3、)では (標本分散)ですが、不偏分散は です。 が大きくなるほど は1に近づくので、大標本では近似的に と扱って構いません。
「2乗の平均」と「平均の2乗」の差というこの形は、この先、確率変数の分散 として何度も再登場します。ここが初出です。
データを一様に変換すると何が起きるか
全員の点数を 倍して 点足す()と:
- 平均: (両方の影響を受ける)
- 標準偏差: ( は散らばりに無関係)
偏差値はこの変換の応用です。平均50・標準偏差10になるように
とデータを引き伸ばしたものさしの規格化でした。中身の は「平均から標準偏差何個分離れているか」を表し、第5章でz値という名前で主役になります。
箱ひげ図と四分位範囲
散らばりの指標は標準偏差だけではありません。データを4等分する四分位数を使うと:
- 四分位範囲 IQR = 第3四分位数 − 第1四分位数(真ん中50%の幅)
- 箱ひげ図 = 中央値・四分位数・外れ値を1つの図に圧縮した表現
外れ値に引きずられにくいのが強みで、平均・標準偏差ペアと使い分けます(歪んだ分布では中央値・IQRが安全)。
操作チャレンジ — 図で解く3問
計算式を、手の感覚と一致させましょう。
赤い点をドラッグして、5個のデータの平均をちょうど60にしてください。
データ / 平均
式で確かめる
動かして掴んだ感覚を、式と言葉で確かめます。間違えても、ヒントと解説で戻れます。
確認 1 / 3
標準偏差 = 4 のデータを y = 3x + 10 と変換しました。変換後の標準偏差 はいくつですか?
確認 2 / 3
平均 55・標準偏差 5 のテストで 65 点を取った人の偏差値()はいくつですか?
確認 3 / 3
全員の点数に一律 10 点を加えると、標準偏差はどうなりますか?
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執筆: 古郷優平 / 監修: 中野竜之介
中野竜之介: 北海道大学大学院 数学専攻 博士課程・専門: 特殊関数論と代数幾何の交わり
数学レビュー協力: 木村敏樹
最終更新: 2026-07-05